寄稿「猪目峠」

寄稿「猪目峠」

この峠は、島根半島を南北に越しています。峠の標高は140メートルほどで、涼を求めて歩くには低いかなと思いました。でも、昔は山を歩くのは生活の一部。暑いも寒いもなく、用事があれば歩いたわけです。

その時の、子どもの用事は「海水浴」。

海水浴に行くのに山歩きなんて今では考えられません。けど、大社町宇龍の桁掛半島を歩いた時も、中途に海水浴場がありました。それがふつうだったのでしょうね。

山に入ってみると、思ったより涼しかったです。運動すれば体が熱くなって汗が出ます。森の中で沢をなでる風がとてもひんやりとしていました。暑くてもさわやかです。

街中は空気そのものが体温くらいに暑すぎて、おなじように汗をかいてもべたべたとして気持ちが悪いです。

山道はよかったけれど、古浦側に下りてからの横手林道を経て母の同級生のお宅までが大変でした。アスファルトの照り返しのきついこと! 頭はカッカするし顔はまっかになりました。

林道を下がるときに見えた海の青の美しいこと! 山を越すと海がひときわ美しく見えるのです。銀山街道を歩いた時もそうでした。ちょっと高いところからちらちら海が見え、重い荷を担いで「やれやれ、もうすぐだぞ」と声をかけ合いながら、下りていく・・・歩く人の、疲れてもホッとしたような息づかいが聞こえてくるようだったのです。

古浦

猪目の滝

母の同級生のお宅でお昼を。

長野至手製図